無落雪屋根について

取付工法

北海道、東北地方北部に採用されている「無落雪屋根」についてご紹介します。

雪を落とさないという発想

屋根とそれを支える構造には、耐荷重の許容量が設定されています。その地方の積雪量や屋根の構造、勾配から計算されて安全係数がかけられたものになります。

従来の勾配屋根は一定量の積雪が溜まれば雪下ろしをするか、雪が溜まらないほどの勾配を付けて自然に落とすなどして、雪が順次なくなっていくことを前提としています。

これに対し、「無落雪屋根」は雪を落とさずに積もりっぱなしにしておくことを前提とした屋根になります。

その形状は…

無落雪屋根の形状

ダクト方式

通常の勾配屋根は建物の外側に向かって勾配がつけられ、雨水や雪を建物の外側に落とす形状になっているわけですが、このダクト方式は逆に建物(屋根面)の中心部に配置されたダクト(大型の雨樋)に向かって緩い勾配がつけられております。

積雪を屋根の上に載せたままの状態にしておき、融けて流れ出した水をダクトで受けて、屋内を経由して排水するという方式です。

雪を落とさず、屋根端部につららができてそれが落下して危険…ということもおこりにくい優れた発想の無落雪屋根になります。

勾配屋根方式

一見するといたって普通の屋根に見えるのが、この勾配屋根方式となります。

通常の屋根よりもしっかりとした雪止め金具を多数配置したり、または最初から雪が止まる金具が付いている屋根となります。

この雪止金具で雪をしっかりと止めて無落雪状態を維持しています。

融けた雪は十分についている(通常の勾配がありますので)勾配によって軒先から流れていきます。

フラット方式

無落雪屋根らしく、まさに積雪をそのままに載せておく方式で、わずかに設けられた勾配で融け出た水を軒先方向に流していくという形状になっております。勾配が緩いことでダクト方式や勾配屋根方式よりはつららができやすいと考えられております。

無落雪屋根の利点

積雪の多い地域では様々な方法により落雪の被害や雨漏りの心配に対応する屋根形状が採用されてきました。

雪止を一切設けずにすべての雪を落とし続ける発想の「急こう配横葺金属屋根」などを除いて最大の苦労は「雪下ろし」です。

危険が伴う作業ですので、高齢化がすすむ山間の地域では作業人員の確保も大変です。1シーズンで10万円近い出費を強いられているご家庭もあります。

この問題を解決できるものが無落雪屋根です。

無落雪屋根の問題点

雨漏りの心配

冬季シーズン中、雪を載せっぱなしにする無落雪屋根の問題はやはり「雨漏りの心配」といえるでしょう。

屋根面に積雪がずっと触れているわけですので、雨水の進入路があればそこから時間をかけて水が浸透していきます。

そこで無落雪屋根に採用される屋根材は事実上「金属屋根」の一択と言えるでしょう。

定期的な清掃が必要

また、もう一つの問題点は「ゴミが溜まりやすい」ということです。雪を落とさないように設計されているので、落ち葉などのゴミも当然屋根面に溜まりやすくなっています。

雪下ろしの不要な無落雪屋根に必ず昇降できるはしごが備えられているのは、溜まりやすいゴミを定期的に清掃し、雨水の排出をスムーズな状態に保つためです。

建物に高い強度が求められる

雪の重みは一般的には1立方メートルで50kg~100kgとされています。無落雪屋根が採用される地域は特に気温が低く湿度も低いことから、新雪時はサラサラでほうきで払えるような軽さです。

しかし屋根上に降り積もり続け、重みで圧縮を繰り返してどんどんと重くなっていき1立方メートルあたり500kgを超えるような締まり雪になっていきます。

無落雪屋根はこのような膨大な重みに耐えられるような建物自体の強度が求めらることになります。

つまり無落雪屋根にはそれだけのコストがかかるということです。雪下ろしという重労働から解放される代償はそれなりにかかるというのが現実です。

無落雪屋根への太陽光モジュール設置

落雪屋根への太陽光は増えているのか

このような膨大な重量に耐える無落雪屋根に対して、さらに重量をかける太陽光モジュールの設置は進んでいるのでしょうか?

答えはイエスです。

たとえば札幌市の屋根には着実に太陽光の設置が増えてきております。

太陽光モジュールの重さは締まった雪に換算すればおおよそ3~5cm程度の重みになります。無落雪屋根はその程度の雪が増えたところで問題が出るようなヤワな設計ではありません。まさに誤差の範囲と言ってしまってもかまわないのでは…と考えます。

北面にでも設置できる

ダクト方式、フラット方式は勾配が緩いので、ご近所への反射光の問題がほとんどないといえます。またダクト方式の場合、屋根の外周部には雪を落とさないためのパラペットという立ち上がり構造が設けられていることが多く、このおかげで反射光がさえぎられている例もみられます。

まとめ

非常に優れた構造をもつ無落雪屋根はいくつかの弱点もありながら、総じて居住者のメリットの大きい屋根構造になっており、太陽光も通常の金属屋根への設置を変わらずに行うことができる。

ただし、屋根面と雪が接触した状態が長く続く無落雪屋根への太陽光モジュール設置は、雨漏りリスクを特に警戒し、穴の開かない設置工法を選ばなければならない…ということになります。

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