太陽光発電システムの見積りを比べるためには、最低限の構成機器について簡単でもいいので知っておかねばならないと思います。
下記で詳しく説明しますがすべてをご理解いただく必要はありません。さいごに簡単にまとめますのでそこだけはチェックしてください。
太陽電池モジュール
(= 太陽光パネル、太陽光モジュール)
電池といわれるように乾電池のような構造と思ってOKです。電池なので「直流」の電気を発生させます。理科の実験でやったこともあると思いますが、電池をいくつも「直列」につなげていくと「電圧」が増えていきますが「電流」は一緒のままになります。
太陽電池モジュールはほとんどの「単結晶」「多結晶」(結晶系といいます)のものでは1枚当たり25ボルトから35ボルト程度になっており、これらを直列に10枚程度つなげて「ストリング」と呼ばれるグループを作ります。電圧は250~350ボルトになり、電流は1枚分のままの9~10アンペア前後になっています。
例をあげてみますと…
シャープ製単結晶モジュール「NU-250AJ」のスペック
・セル種類 単結晶
・モジュール変換効率 19.2%
・公称最大出力 250W
・公称最大出力動作電圧 26.52V(実際に発電をしているときの電圧と考えてください)
・公称最大出力動作電流 9.43A(実際に発電をしているときの電流と考えてください)
・公称開放電圧 32.53V(単体で出力できる最大と考えてください)
・公称短絡電流 9.95A(単体で出力できる最大と考えてください)
・外形寸法(長さ×幅×厚み) 1318×990×46mm
・質量 15.0kg
この「NU-250AJ」を10枚直列に並べて接続すると、最大電圧323.5ボルト 最大電流9.95アンペアのストリングが出来上がります。
運転を開始すると最大電圧265.2ボルトで最大電流9.43アンペアの2,500ワットの直流電力になります。
パワーコンディショナーは最低でも50ボルト程度の電圧がかからないと運転を開始しません。
ですので、太陽電池は単品1枚では機能できないため「モジュール」≒構成部分と呼ばれているのです。
また、カタログスペック上で2,500ワットのストリングを作っても実際の運転時に発電できるのは最大約85%程度になります。日本では最大の発電量が期待できるのは5月になることがほとんどですが、このストリングは5月の最も発電する11時~12時ころに2,125ワットの出力を出すことができます。
また、化合物系モジュールというものもあります。
「ソーラーフロンティア」が製造しているものが有名ですが、このタイプは結晶系と出力の特徴がちがいます。
例を挙げてみましょう
ソーラーフロンティア製CISモジュール 「SFK185-S」
・種類 CIS太陽電池(銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)を使用。3つの頭文字をとりCIS)
・公称最大出力 185W
・公称最大出力動作電圧 95.0V
・公称最大出力動作電流 1.95A
・公称開放電圧 121V
・公称短絡電流 2.19A
・質量 18.5kg
・外形寸法(mm、L×W×H) 1,257×977×35
上記のように化合物系のモジュールの特徴は「電圧が非常に高く電流値が少ない」ということがあげられます。ですので、ストリングを作るときは3枚直列などで構成します。3枚直列で電圧285ボルト電流1.95アンペアの555ワットのストリングになり、これを並列ケーブルというもので接続し3~4並列回路に集めます。4並列なら285ボルト7.8アンペアの2,223ワットの回路を構成します。
パワーコンディショナー(パワコン)
(= インバーター とよばれることも)
太陽電池モジュールで発生するのは直流電力ですので、これを住宅で使える電力=「交流電力」に変換する機械です。
住宅用では大きく分けて2種類に分けられます。
・マルチ型パワコン
複数のストリングを直接つなげることができるパワコンです。
さきほどの例でいうと10枚直列のストリングを3回路つなげることができる…などです。
これを業界の呼び方で言うと「マルチパワコンに10直3並列の太陽光発電システム」となります。最大2,500ワットを3回路なので最大7,500ワットがパワコンに流れ込みます。3回路でそれぞれプラスとマイナスのケーブルがありますので、このパワコンには3×2で6本のケーブルを接続することになります。
・集中型パワコン
複数のストリングを事前に1回路にまとめてから接続するパワコンです。
先ほどの例でいうと10枚のストリングを「接続箱」(後述)でまとめてからつなげます。
接続箱の中で1回路265.2ボルトで最大電流9.43アンペアの回路を3並列に接続すると…理科の実験のとおり並列接続では電圧は一緒で電流が増えます。
つまり、最大265.2ボルトはそのままで最大電流9.43×3の28.29アンペアの7,500ワットの1回路にまとめられ、これを集中型パワコンに接続します。
つまり接続箱に6本のケーブルが入っていき、出てくるときは太い1本のケーブルになって出てきます。これを集中型パワコンに接続します。
パワコンには受け入れられる電力、変換できる電力が決まっており、住宅用ですと3,500ワット~5,500ワット(3.5kW~5.5kW)になっています。
接続箱
集中型パワコンに接続するために複数回路を1回路にまとめることができる配線機器です。マルチパワコンのときは不要です。
発電モニター
発電の様子、現在の家庭内で使っている電力の表示、売電で売れていっている電力を見ることができます。モニターは必須ではないメーカーが多数ありますが、シャープなどはモニターがないと運転開始に必要な設定をすることができませんので必須機器になっています。この表示装置をインターネットにつなぎますと出先から発電の様子や電力の使用量をスマホなどで見ることができます。
CTセンサー
発電モニターに家庭内で使っている電力量を表示させるためのセンサーになります。多くの表示装置は「売電量=発電量-家庭内での消費」という式で計算しているだけですので、このCTセンサーがないと売電量が算出できない…ということになります。発電モニターとセットになっていて見積もりに名前が挙がってきていないこともあります。
まとめ
太陽光発電システムの構成機器は…
①太陽電池モジュール
結晶系なら10枚程度を1組にして2~3回路のストリングを組む。化合物系なら3枚程度を1組にして並列ケーブルで計12枚程度のストリングを組む
②パワーコンディショナー
作ったストリングを…マルチパワコンならそのままパワコンに接続、集中型パワコンなら接続箱で1回路にまとめて接続
③電力モニター
発電量、使用量、売電量を確認できる機器
以上です。
パネルで発電し、パワコンで交流に変換し、モニターで確認して使うのが太陽光発電システムです。
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