太陽光モジュールの洗浄は必要なのか?出力低下と補償のはなし

太陽光発電のあれこれ

住宅用太陽光発電は多くの場合「屋根置き」設置になっているわけですが、時折、お客様から「パネルは洗ったほうがよいですか?」という問い合わせをいただきます。

春の黄砂シーズンなどに特にこのような問い合わせを多くいただくのですが、私は「放っておきましょう」と答えるようにしています。

その理由は…

①通常考えられる程度の汚れが原因の発電量の低下はせいぜい3~5%程度と言われており、洗浄で使う費用の回収が見込めないこと。

②パネル表面の汚れは、特に洗浄などを行わなくとも強めの雨が降ったときなどにある程度きれいになるから。

パネルの傾斜が10度あれば十分きれいに流れ落ちると謳っているメーカーもあります。たしかに「折板屋根」などのもっと緩い勾配の屋根の場合、あきらかにパネルの汚れは流れ落ちにくいと感じます。

③モジュールのガラス面は各メーカーそれぞれの工夫がなされており、ブラシなどでこすると厳密にいえば機器保証の対象から外れてしまうということ。

上記の3点が理由です。

①の洗浄費用は、まず危険対策として屋根に登る仮設足場、もしくは高所作業車をレンタルする費用と水道料金や電気代になります。昇降用の仮設足場を組むだけでも5~6万はかかりますので、人を頼めば簡単に10万円を超えてしまいます。

これを発電量の回復で元を取ろうと思っても到底難しいと言わざるをえません。

③の保証については各メーカーの見解は分かれます。某メーカーの担当者によれば洗浄でのパネルガラス表面へのダメージよりも、浄作業中にパネルの上を歩いたりしてセル(パネルのガラスで守られているシリコンの板、太陽光を受け電力を発生させている最も重要な部品)へダメージがいくことを問題視しているとのことでした。

セルは厚さ1mmもないシリコンの薄い板でガラスで保護されないと簡単に割れてしまうものです。ガラス面を歩いた時の体重でガラス面がたわみますとセルもたわみ、一定以上になればヒビが入ります。ごく微細なヒビなので「マイクロクラック」などと言われますが、これが発電の効率ダウンを引き起こします。また、セルで生まれた電力を集めるためにセル表裏に配置された「バスバー」という電路はところどころ「はんだ」で溶接されているのですが、これがガラス面のたわみでセルからはがれてしまい、大きな電気抵抗=発電力の低下を引き起こす原因となることがわかっています。

太陽光モジュール(パネル)には出力保証(補償)がついている

太陽光モジュールには「出力自体の保証」がついています。短い会社でも15年、長いところは25年の保証をしています。

主なメーカーでご紹介しますと…

Panasonic 25年

シャープ 15年

京セラ 20年

ソーラーフロンティア 20年

長州産業 25年

ネクストエナジー 25年

カナディアンソーラー 25年

ハンファQセルズ 25年

ざっと以上になります。

保証と補償と対応と

15年保証が25年保証よりも劣っているということにはなりません。出力が一定期間内に一定以上下がらないことを機器保証として行っているのか補償として考えているのかでも違います。

また、ユーザーにとって一番大事な部分は出力低下が判明したときどうなるの?という事だと思います。

メーカーによっては、「替わりの新しいものを送ります」…以上。というところもあります…。誰が交換工事を行うのでしょうか?

一般のユーザーが自分で行うことはまず不可能ですので工事業者を用意しなければなりません。設置したときの販売業者と連絡が取れない…と私の会社に連絡してくる一般ユーザーもいます。

交換工事の費用はだれが負担するのか

新しいモジュールを送ってくるタイプの場合、費用負担の件は最初の設置前に確認をしておいたほうが良いでしょう。

最終的には工事費も保険でおりることがほとんどだと思いますが、だれが新品交換品を受け取って、だれが施工して、だれが保険会社に請求するのか…は見落としがちですが大事な確認事項となります。

補償問題になってしまうケースも

モジュールに出力低下が起こっていてもパワーコンディショナーと違って明らかなエラーや部品の故障、正常な運転にならない…などの判りやすい症状がない場合がほとんどですので、相当の低下が起こらないと気付くことができません。また、原因を特定することも非常に難しく、いつから低下していたか正確には判らないのでその間の発電量はあきらめるしかないのが実情です。

出力低下に気付くためには

天候の影響をまともに受け続ける太陽光発電ですので、出力低下に気付くのはとても難しいと言わざるを得ません。設置2年目以降は「前年の同月と比べて極端に減っていないか」を確認するようにしましょう。天候の影響はあるにしても前年同月から3割以上も減っていれば何らかの問題を疑うべきかもしれません。そんな時に連絡する先も事前に確認しておくと安心ですね。

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