売電のしくみ

太陽光発電のあれこれ

住宅用太陽光発電システムを設置するメリットとしてもっとも有名なのが「売電」とよばれるものになるでしょう。「売電とは」を説明するには、まず住宅の電気がどのように使われているかを先に説明したほうがわかりやすくなります。

住宅で電気が使われるまで

発電所で発電

主に火力、原子力、水力を使って発電され、22万~50万ボルトの超高電圧で基幹変電所に送られる。 ※超高圧で送ると途中の損失が抑えられる

送電のときに発生する損失

なぜ、超高圧で送ると損失が抑えられるのかというと、電力の損失は主に「電流値の大きさ」により左右されるからです。つまり大きな電流を送るときは大きな損失が発生するということです。

たとえば東京から大阪まで100メガワットの電力を送りたい場合…

・100メガワット = 100 × 1000kW なので 100000kW

・ワット = 電圧 × 電流 である

このとき…

①超高圧50万ボルトで送るのなら

  100000kW ÷ 500000V = 20 だから電流値は20A(アンペア)

②高圧6600ボルトで送るのなら

  100000kW ÷ 6600V = 1515 だから電流値は1515Aになる。

単純に言うと超高圧で送れば、電流値が高圧に比べて「75分の1」で済むので、損失もそれに伴って軽減される(単純に75分の1ではないが)

基幹変電所で66,000ボルトに落とす

基幹変電所や二次変電所と呼ばれる施設で66,000ボルトに落として配電用変電所に送られる(配電用変電所までの損失を抑えるため高い電圧を維持)

これの理由もなるべく高圧を保ったまま送電したいので…ということになる。

配電用変電所で6,600ボルトに落とされる

配電用変電所で6,600ボルト(高圧)に落として市中の電線(電柱に架かっている)に送ります。たくさん電気を使う工場や会社はこの「高圧」のまま電気を買う(自分の敷地内で低圧100~200ボルトに落として使う)。

キュービクルとは

高圧のまま電力を買うばあいは、自分の敷地内で100~200ボルトに落として使わねばならないので、その電圧を下げる変圧器や電気を遮断する機器(家庭でいうブレーカー)を内蔵させた「高圧受変電設備」を自前で用意しなければなりませんこれらの機器をコンパクトにひとまとめにして1つのBOXにまとめたものを「キュービクル」と言います。規模が大きいときはこれをいくつも連結した形になっています。

キュービクルとはこれのこと

柱上変圧器で家庭用の電圧に

住宅は電柱に設置されている「柱上変圧器」(バケツみたいなヤツ)で102~108ボルト程度に落としたものを引き入れて使う。

以上の流れで住宅のホーム分電盤に電気が来ているのですが、太陽光発電で作った電気も同じくホーム分電盤に流れ込みます。

このとき住宅で使っている電力を太陽光からの電力が上回ると、電気は通常の流れの逆方向=電柱側に向かって流れていきます。これを逆潮流と言い「売電が行われている状態」となります。逆潮流が行われた量が売電量になるのです。

どうやって「売れた量」が判るのか

これまでは太陽光発電をしている住宅には電気の料金メーターが2個ついていました。買った電気の量と売れた電気の量をそれぞれ1個ずつで記録するためでした。

ただ、数年前から「スマートメーター」という新しいメーターに交換が始まっています。

このスマートメーターは買った量も売った量も1個で記録することができ、さらに無線でネット経由にて電力会社にデータが送られます。これからの新築では最初からスマートメーターになっていますし、既築住宅に太陽光をつけるとメーターの交換が指示されスマートメーターに変更になります。

ということで、「検針のおばちゃん」のお仕事が徐々に減っていくことになりました…。

ある晴れた日の住宅の売電の様子は

朝の起床時間から出勤、子供の通学までに多くの電力を使いますが、この時間帯はまだ太陽が高く昇ってきておらず発電量が少ないので、発電で足りていない電力を電力会社から買っている状態です。

出勤、通学が済むとあまり電気が使われない状態になりますが太陽はどんどん高くなり発電量も増えていき、電力が余るので売電が開始されます。

この後、昼食時間になればまた料理などに電力を使いますが十分に発電量がある状態ですのでそれでも売電は続いています。

その後、夕方にさしかかり太陽の動きとともに発電量は減っていきます。そして外出していた家族が帰宅し始めますと電力を大きく使いだし、また夕食の調理も始まります。太陽光の発電量も少なくなっていますので売電状態は終わって電気を買っている状態になります。

夜間は発電がありませんので使っている電力のすべてを買っている状態です。

以上のことから…

太陽光発電とオール電化住宅はとても相性が良い

オール電化住宅用の電気料金プランは日中の単価が高く、夜間が割安に設定されているからです。高い時間帯の電力は太陽光発電のおかげで買わなくて済みますし、発電がない時間帯は電気料金が安くなっているからです。

ちなみに…オール電化の優位性が弱体化されるようになった

夜間の料金がとても安く、太陽光発電と相性のよいオール電化契約なのですが、各電力会社でこれまでよりもの優遇の幅が小さく設定された(お得度が小さくなってしまった)プランが発表され、これからの新築はこの新オール電化プランしか選べなくなってきています。現在、昔のプラン(お得度が大きい)で契約している人も何かの理由で電力契約を変更するときには「新オール電化プラン」しか選べなくなっています。

そもそもオール電化プランは原発ありきの制度だった

原子力発電を推進してきた大手電力会社にとって、原発からの電力を上手に消費することが課題だった…というのがオール電化プランの生まれた理由といわれています。

夜間は停止して毎朝運転を再開…などというふうには使えないのが原発です。簡単に止めることができないので発電はずっと続けることが前提のシステムです。電気を貯めるには巨大な蓄電池設備を用意するか、揚水式発電所で位置エネルギーに変換して貯めておくしか方法はなかったので、夜間の電気料金を大幅に安くして消費量を確保するという方策を採ったと言われております。これが「オール電化プラン」ということです。

原発の再稼働が難しく夜間の消費に困らなくなっている

各地でなかなか進まない原発の再稼働により、夜間の消費の確保の心配は薄れ、夜間の発電量の維持も考えねばならなくなった電力会社は、オール電化プランをこれまでのように強く推進する必要がなくなり、どれによって優遇が小さくなってきていると言われているのです。

まとめ

住宅で使っている電力を超える発電があれば、余った電気が電柱に逆流し「売電」される。発電が余れば余るほど売電される。売れた電気の量はスマートメーターからデータが送られ月々振り込まれる。

ただし、これまでと違い「電気を売るときの単価」よりも「自家消費することで買わなくて済む電気料金単価」のほうが高くなりましたので、無理な節電をしなくてもメリットを感じやすくなったのではないでしょうか…?

「グリッドパリティ」って?電力は売るより買わない時代へhttps://www.taiyoumitsumori.com/grid-parity/

以上になります。

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